1年に数回、
「うちの子、学習障害かもしれません。」と
ご相談を頂くことがあります。
ちなみに、学習障害とは…
Learning Disability(LD)
“全般的な知的発達に遅れがないものの
「聞く」「話す」「読み書き」
「計算・推論する」能力に困難が生じる
発達障害のこと”であり
特定の分野にのみ著しい苦手さを示す
障害のことです。(ネットより抜粋)
今年も、夏休みにそういうご相談を受け、
面談にお伺いしました。
こういう場合は、
いつも同じ手順で面談を行います。
まず、
ご両親にどうして”学習障害”だと
思うのかをお聞きする。
次に、
現在の学習状況を聞きます。
そして、
お子さんのテストをチェックし、
実際に問題を解いて貰い、
最後に、
ご両親に私の考えをお話しします。
もちろん、一番始めに…
「私は医師ではないので、
医学的な判断は出来ない。
判断は私独自考えであり、
それでも良ければ、
面談をお受けします。」と伝えます。
今回の子供さんは中学2年生。
「小学4年生から公文へ通い、
中学1年生から家庭教師が来ているが、
全く成績が上がらない。
特に数学が全く出来ない。
計算において障害があるのでは?」
というご相談内容でした。
成績は英語、数学、理科、社会が
100点満点で10~20点。
とても家庭教師が来ているとは
思えません
しかし、答案用紙をよく見てみると、
数学や英語でも、
まぐれではなくて、
ちゃんと理解して解けている所があります。
問題用紙に、
計算の過程を書いてありましたが、
惜しい所まで出来ている問題もありました。
「この問題をもう一度解いてみてくれる?」
と計算問題を解かせてみると、
スラスラ正解を導き出します。
つまり…
テストで間違えたのは
ケアレスミスだったのですね。
「この文章題はこうやって解くんだよ。」
とやり方を説明して、
「自分でもう一度解いてみてくれる?」
と言うと、
それもスラスラ解けました
そのお子さんの答案用紙を見て、
何よりも素晴らしいと思ったのが、
“一番最後の問題まで、
ちゃんと戦った形跡がある“
ということでした。
100点満点で10~20点くらいしか
取れない子供さんは、
前半の簡単な問題だけ解いて、
後の方の難しい問題は
サラッと読むだけで
ほとんど空欄のことが多いです。
ですが、そのお子さんは
後ろの方の問題まで、
計算をした形跡があったり、
ポツポツ答えを書いてあったりしました。
それは、数学だけでなく、
英語などの他の科目も同じです。
「ちゃんと最後の問題まで
チャレンジしているね~
分からない問題が多くて
心が折れそうになるだろうけど、
それでも最後まで諦めずに
頑張ってるのは、
素晴らしいと思うよ~」
と、子供さんに伝えました。
お母さんは
「えっ?そうなんですか?
いつも点数しか見ていないので
全く気がつきませんでした」
と言われていました。
「家庭教師の先生は
どういう宿題の出し方をしていますか?」
と尋ねると、
「”次までに英単語20個覚えてね”とか、
“数学3ページしておいてね”
という宿題です」
「じゃあ、授業は?」
「購入した問題集の解説の部分を
説明してくれます。
そして、その単元の問題が
宿題に出ます」
「宿題で間違えたところは?」
「1,2問教えてくれて、
“あとは自分で直しておいてね”
と言われます」
非常~にセオリー通りですね
お子さんへの質問はここまでで、
その後、ご両親と話をさせて頂きました。
「結論から言うと…
“学習障害ではない”と私は思います。
もちろん、私は医者ではないので、
ご心配であれば専門医にご相談されるのが
良いと思いますが…」
「ではなぜ、
あんなに勉強が出来ないのでしょう?」
「小学生の頃、お子さんと一緒に
勉強をしたことがありましたか?
“学校の宿題をしなさいよ”
“公文の宿題をしなさいよ”と
声かけをするだけではありませんでしたか?」
「声かけをするだけで
一緒に勉強はしませんでした。
ですが、勉強は学校や公文で
教えて貰っていますよね」
「自動車教習所へ行って、
同じように運転の方法を学んでも、
あっという間に習得する子と、
何度も補講を受ける子がいますよね。
でも、免許を取得後は
みんな当たり前のように運転できる。
勉強方法も同じです。
だれからも教えられなくても
自分で出来るようになる子もいれば、
誰かが手取足取り教えてくれなければ
出来るようにならない子もいます。
ですが、
勉強の方法さえ習得出来れば、
同じように勉強が出来る場合もあるんです。
お子さんは、
学習能力がないのではなく、
学習する方法を知らないのだと思います。
「単語20個覚えて下さい」
と宿題を出されても、
覚える方法を知らない子は
覚える事が出来ない。
「数学2ページやってね」
と宿題を出されても、
解き方が身についていないので
正解を導き出す方法が分からない。
本来であれば、小学生の間に
“どうやれば漢字が覚えられるのか?”
“どうやれば算数の文章題が解けるのか?”
お子さんと一緒に模索するべきだったと
私は思います。」
そう~親御さんにお話しました。
「小学生の時から、
“勉強が分からない”
“勉強が嫌いだ”
“勉強をやりたくない”と
ずっと言っていましたから、
“この子は学習障害かもしれない”
と思っていました」
「分からないことや
知らないことを頭に入れるのは難しい。
私だって、
“六法全書10ページ暗記してこい“
なんて言われたら
発狂してしまうと思いますよ
今のお子さんにとっては、
“勉強は分からないもの、
未知なもの”になってしまってるんです。
だから、学校の授業も
全く頭に入らないのだと思います。」
「学校の授業を受けて
どうしてこんな点数なの~
ちゃんと授業を聞いてるの~
って思って…
いつも子供を叱ってました」
「いくら叱っても
勉強方法は身につきませんから(ToT)
“漢字はこうやって覚えてみる?”
“英単語はこうやって覚えてみる?”
“この数学の問題はこうやって解いてね”
“この数学の問題を解くコツはこれなんだよ”
一つ一つ丁寧に解説して、
一つ一つ出来る事を増やしていく…
今のお子さんにはそういう指導が
必要なんじゃないでしょうか?
お子さんは
“出来ない”のではなく”知らない”のだと
思ってあげて下さい。
今からでも決して遅くはないと
思いますよ」
と、最後にお話をしました。
私のブログを読んで下さっている方々は
中学受験を視野に入れている、
あるいは
中高一貫校に通っているお子さんがいる
場合が多いと思います。
“学習障害”とは無縁かもしれません。
それでも、
今回この内容を記事にしたのは、
子供にとって
“出来る事が当たり前では無い”
ということを書きたかったからです。
勉強は出来てもスポーツは得意じゃない
国語は出来ても数学は得意じゃない
外面は良くても家では我が儘だ…
親は、我が子に完璧を求めがちですが、
人間は得手不得手があるのは当たり前
そして、”出来ない”理由は、
子供側にあるのではなく
周りの大人にあるのかもしれない…
そういう考え方も
時には必要なのかもしれません。
そしてそして、一番重要なのは、
子供は1人1人全く違う生き物だということ。
「お友達があの塾で成績が伸びたから…」
「お姉ちゃんは、この方法で
中学受験に成功したから…」
「○○君は1日10時間勉強して
東大へ合格したから…」
我が子に当てはめてみても、
成功するかどうか分からない
成功しなくても当たり前
だって、
うちの子は世界でたった1人の
大吉君なんだから…
そう思って欲しいと私は思います
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